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池田理代子さんを読み倒す。(19)『オルフェウスの窓』第2部(ウィーン編)

2006-05-17 (Wed) 12:56[ 編集 ]
第2部からは掲載誌を週刊マーガレットから月刊セブンティーンへ移しての連載となりました。これは理代子先生の希望で、ロシア革命などの歴史的部分を深く描きたいので低年齢の読者には理解しにくいだろうからとの配慮だとのことです。
この「ウィーン編」も、イザーク他登場人物の成長と共に様々な形の大人の愛を深くえぐり出すように追求しており、レーゲンスブルク編やロシア編ほどの激しさはありませんが、しっとりとして純粋で清らかな印象があり理代子先生自身も女性として深みを増していると容易に想像できる作品になっています。1977年(昭和52年)1月号~翌年年1月まで連載されました。

**第2部「ウィーン編」あらすじ**

ウィーン音楽院に留学したイザークは、ユリウスのいない苦しみと音楽への見えない壁の中で、美しく奔放なアマーリエと激しい恋に落ちる。彼女に裏切られ、何もかも捨てて故郷に帰ろうとしたときに出会ったのは「鍵盤の獅子王」と呼ばれるピアニスト、ヴィルヘルム・バックハウスだった。彼との邂逅で音楽への迷いを断ち切ったイザークは、ピアニストとして華々しくデビューをして数々の賞を受賞する。
その頃、イザークを追うようにウィーンに来たロベルタは娼婦として働いており、一通のメモを拾ったことからスパイ容疑をかけられ投獄されてしまう。容疑が晴れ、再会した二人は結婚するが、違った環境で育った二人が共に暮らすという現実は次第に二人をすれ違わせ、ぎくしゃくとした結婚生活を送るようになる。そして第一次世界大戦が勃発し、兵隊に召集されたイザークがウィーンに帰ってきたとき、ピアニストの命である指が動かなくなっていた・・・。

第一部のような派手さや緊張感はないけれど、人間として・芸術家として・女としてというように、一人一人の人間模様を深くえぐり出すように描かれていて、単なる少女漫画ではない文学的な完成度を持つ重厚な章となっています。とりわけクラシック音楽の好きな人にはたまらない章になっているかと思いますが、音楽的要素以外にも読み手を引き付けて離さないのが、登場人物たちの様々な形の「愛」。
広い心で相手を思いやろうと努力はするけれど、なかなか相手の心を満たせず思うように愛し合うことが出来ないイザーク。彼を見ていると、愛していればいいってものじゃないのだなと思わされます。相手とのバランスと言うものが大切なのですね。優しいだけでもだめ、自分の趣味を押し付けてもだめ。アマーリエはほどなくして彼に飽き、徐々に離れていってしまいます。
イザークへのアマーリエの愛は一時的な衝動のようなものでした。彼女には別に婚約者がいて、結婚相手にふさわしい地位のある男性以外は将来は一切考えない、楽しいだけの恋愛。イザークのような恋愛初心者には、この手の恋愛は辛かったですよね。
そして、娼婦にまで身を落としてもイザークを愛し続けるロベルタ。愛には様々な形があることを一番物語るのが彼女の行動です。体でお金を稼ぎながら匿名でイザークに花束を贈り続け、イザークにスパイ容疑がかかるのを恐れて自ら虚偽の自白をする。そしてイザークの指の治療に必要な費用を得るために、彼女に以前から言い寄っていた男に体を売る・・・彼女は他の人とは、体の価値と心の崇高さの比率が全く違うのですね。彼女のイザークへの愛はとても純粋で美しいものだと思えるのですが、少女時代から親の借金のカタに売られて育った彼女ですから、愛ゆえの行動でも許せる心の広い人はなかなかいないでしょう。イザークも理解しようとは思っていてもついには許せず彼女を追い出してしまいます。
イザークのロマンスと対をなすのが、第一部ではいじめっ子だったモーリッツ。彼は事業家として成功し、イザークの良き親友となっていました。仕事でウィーンに立ち寄ったときに出会ったのは、イザークの教え子であるマルヴィーダ。彼女はモーリッツの初恋であるイザークの亡くなった妹フリデリーケに瓜二つで、ほどなくして二人は恋に陥ります。モーリッツは妻帯者なので不倫の恋なのですが、彼にとって結局マルヴィーダは叶わなかった初恋以外の何物でもありませんでした。モーリッツの妻はフリデリーケが亡くなったときに傷心の彼を支えたベッティーナなのですが、彼女はモーリッツとマルヴィーダの不倫を察し、モーリッツに夫婦の絆と歴史の重みを訴えます。びっくりするほどあっさりモーリッツは妻の元に帰ってしまいますが、これはベッティーナの勝ちでしょう。彼女は現実を見据えて的確な対処のできる賢い女性です。マルヴィーダはまだまだ夢見る少女で、その少女と一時は結婚まで考えたモーリッツも今ひとつお子ちゃま。(そんな男性って多いですよね(笑))その旦那様を上手くコントロールして、事業家として成長する支えになるのがベッティーナという女性で、登場する場面はとても少ないですが良妻賢母っぷりを存分にアピールしてくれます。その点、この夫婦はバランスがほどよく取れていて前に進める理想的な夫婦と言えるでしょう。相手を深く思いやることのできるイザークこそ幸せになって欲しいとは思うものの、やはり現実的には、相手の尻を引っぱたけるような関係も必要なのだと思います。

そして一つ特筆すべきところは、実在するピアニストであるヴィルヘルム・バックハウス(ドイツ人。1884生-1969没)が登場すること。彼は「鍵盤の獅子王」と呼ばれ、圧倒的なテクニックとスケールで今も尚語り継がれる巨匠です。彼の演奏するベートーヴェンは、イザークがレーゲンスブルク時代にヴィルクリヒ先生に教えられた「無心に虚飾を捨て去った、生(き)のままのむき出しのベートーヴェン」。生活費を得るために酒場でピアノを弾き続けたたイザークはそのタッチの変化に悩まされるのですが、そうなる前に追求した「神の音」をバックハウスに見出したのです。
バックハウスの名演はCDで発売されていますので、是非聞いてみてください。おすすめはイッセルシュタット指揮/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番・第5番「皇帝」です。BGMとして聴きながら「オルフェウスの窓」の世界に浸ってください(^-^)

他、ウィルヘルム・バックハウス関連CD



今入手しやすいのは↓の「ガールズリミックス版(全8巻)」です(^-^)
オルフェウスの窓(vol.3(決意の旅立ち編)) オルフェウスの窓(vol.4(運命の再会と別れ編)
文庫版:オルフェウスの窓(全9巻)
携帯の方はこちら:オルフェウスの窓(vol.1)
外伝もあります(^-^):オルフェウスの窓外伝
ダウンロードでも読めます:オルフェウスの窓 (1)(全18巻)

オルフェウスの窓大事典
オルフェウスの窓大事典

※悲劇の恋人達の象徴となる劇中劇:ニーベルンゲンの歌(前・後編)

『ニーベルンゲンの歌』を読む
『ニーベルンゲンの歌』を読む

他、池田理代子先生 関連作品

いつか「オルフェウスの窓」ゆかりの地に旅をしたいです。
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関連記事:池田理代子さんを読み倒す。(18)『オルフェウスの窓』第1部(レーゲンスブルク編)

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コメント

はじめまして。

ブログにご訪問ありがとうございました。

モーリッツの変貌振りには驚きですね。
やっぱりフリデリーケの死が、彼に多くをもたらしたのでしょうか?
私個人としては、レーゲンスブルク編とロシア編が好きです。

また遊びにきますね。

いらっしゃいませ(^o^)

Cottonさん、ご訪問いただきありがとうございました!
ホント、モーリッツにはびっくりです。
すごく子供っぽかったのに大人になって、なのに突然また子供に戻ってしまうという・・・
男の人ってこんなものなのかもしれませんね(笑)

またいらして下さいね(^-^)

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