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映画『1999年の夏休み』

2007-03-11 (Sun) 19:30[ 編集 ]
来月上演される劇団アロッタファジャイナ『1999.9年の夏休み』を観る前に
もう一度映画を復習しておきましょうと、今日また観てみました。

前回の記事で書いたように、この『1999年の夏休み』という映画は
萩尾望都さんの秀作漫画『トーマの心臓』にインスパイアされて作られたものだそうです。
純粋に『トーマ』の映画化、という事ではありませんので原作と違う部分もありますし
悠(原作ではトーマ)が自殺を図る理由も全く違いますので、『トーマ』と『1999』は
『トーマ』とその前衛的作品である『11月のギムナジウム』のように
ベースは同じでも全く別の作品、と考えた方がいいでしょう。
原作と照らし合わせて批評・分析することはこの映画の場合は必要ありませんので、
原作は心の奥底の方において観てみました。
(以下、ネタバレ含みます。映画や舞台を楽しみたい方はご注意下さい)

**あらすじ**

山の奥深く、美しい自然に囲まれた全寮制の男子校。
ある日、悠という少年が崖から湖に身を投げた。
遺体が上がらずに3ヶ月経ち、生徒達は夏休みで一斉に帰省をする。
帰る家のない和彦・直人・則夫の三人が寮に残り、ひと夏の共同生活が始まった。
和彦達三人はそれぞれ何事もなかったかのように過ごしていたが、
時折やるせない思いが溢れ出しそうになるのをそれぞれが必死に堪えていた。

そんなある日、悠にそっくりな薫という転入生が学院にやってきた。
薫の出現に寄って安定を取り戻しつつあった三人の心に波紋が広がり始める。
則夫は「悠が死んだのは彼の思いを受け入れなかった和彦のせいだ」と和彦を責め、
和彦は悠の亡霊に捉われて苦しみ、そんな和彦を直人は悲しい目で見守っていた。
大人しかった悠とは対照的に、薫は明るく活発な少年だった。
和彦は薫の向こうに悠を見、徐々に薫に惹かれていく。
しかし和彦に秘かに心を寄せていた直人は焦りを募らせ、果ては則夫を傷つけてしまう。
薫を愛し始めて和彦は変わる。まるで、殻を破って産まれた鳥のように。
愛されることに怯え、自分を愛した悠を拒んだ和彦が薫への愛を告白した時、
悠は魔性の笑みを見せてある事を告げる・・・。

***

まず目を奪われるのは、新緑に囲まれた洋館や鉄道、小さな駅などの風景の美しさ
悠が身を投げた湖や白樺の森は、繊細なピアノ曲に彩られて実に耽美的、そして幻想的。
日本の風景なのに何故か異世界を思わせられます。
パソコンやレコードプレイヤーも、近未来(この映画の公開は1988年)らしいけど
デザインが開発初期のようにアンティーク(配線や部品がむき出しになってます)。
電話やランプも外国の骨董品のように美しく、窓やカーテンまでがその外界から隔離させた
異世界の雰囲気にとても合っていて、まるで印象派の絵画をみているような気分です。
何よりその世界を表現しているのは、少年達を演じているのが少女であること、
そして俳優さんとは別の人がセリフの吹き替えをしていること(悠・則夫は本人)が
少年でも少女でもない、この『1999』唯一の世界を作り上げています。
心を真っ白にして、この世界の空気を体に自然に取り込めて映画が観られれば
登場人物の繊細な心の揺れを読み取る事が出来るんじゃないかなと思います。

そして、今回思った事なのですが・・・

(超ネタバレなので、白フォントで書きます。反転して見て下さい(^-^;))
薫は「僕は悠だよ」と言うのですが、実はどう一人物ではないのではないかと。
悠の和彦への最後の手紙(遺書)を湖で見つけた薫は、その遺書を読んで泣く。
読んでいるうちに薫の心が悠の心と同化して、薫は自分が悠だと思い込んでしまった、
そんな風にも思えます。
薫が母親のアトリエで見せた強い眼差しは、魘された直人の夢だとも考えられます。
直人の言うように、そして薫が言ったように、和彦の心を振り向かせる為に
悠は自分を殺して別人格の薫に生まれ変わってまた姿を見せた、
そう考えるのが自然とはいえ、そうなると薫が手紙を読んで泣いていた事は
何を意味するのか・・・?自分の書いた手紙を読んで泣くのはどうして?

手紙を読む前は薫は薫であり、手紙を読みながら悠と同化した。
そう考えると説明がつくのですが・・・。
そしてラスト、悠と薫そっくりの少年が現れて和彦に「君は悠?それとも薫?」
と尋ねられると、「どちらでもないよ。でも、君の事はよく知っている」と答える。
その少年を学院に案内する和彦。表情は後姿なので見えないけれど、
薫と会った時の和彦とは明らかに違う穏やかな反応。
そしてその少年に会った則夫の表情も、薫の時とは違いはにかんだような笑顔。
則夫も和彦も生まれ変わった事を表現していて、
その少年がそのセリフから悠や薫と関係があることを示していて・・・

・・・あ!!ここまで書いて気が付きました(爆)
悠と薫、そして最後の少年はやっぱりは同一人物ですね(^-^;)
何故薫が悠の手紙を読んで泣いたかと言うと、
生まれ変わって悠としての自分を殺し別人格の薫になっていたつもりが、
その手紙を読んで悠としての心を取り戻した。
心の奥底に封印していた、死ぬ事も厭わないほど和彦を愛した自分の思いに対峙して
張り詰めていた心が一気に飽和した・・・そんな感じじゃないかなと思いました。
そして最後、更に生まれ変わって悠は少年達の前に姿を現します。
今度こそ、少年達は曇りの無い日々を過ごせる、そんな暗示のラストでした。


いやー、深い映画です(^-^;) ますます舞台が楽しみになりました。
スーパーバイザーとしてこの映画の監督・金子修介さんが参加されているのですが、
きっと『.9』がついている分、映画とはまた違った世界を堪能できるのでしょうね。
映画や漫画の世界も胸の奥底にとっておきつつ、楽しんでみたいなと思います(^-^)



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