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池田理代子さんを読み倒す。(16)『ゆれる早春』

2005-12-11 (Sun) 02:32[ 編集 ]
理代子先生の短編の中でも最高傑作に近いのがこの『ゆれる早春』。『クローディーヌ・・・!』と並んで完成度の高い作品です。キャラの魅力・繊細なストーリーが絡み合って美しい世界を築き上げている耽美的な一作で、きっとファンの方にも人気が高いのではないかと思われます。『ベルサイユのばら』の連載中、1973年(昭和48年)5月20日21号に掲載された71頁の作品です(^-^)

**あらすじ**
スポーツが得意で女生徒にも慕われる葛西まこと。彼女の通う高校には男子に絶大な人気を持つ咲岡順子と小林圭子という二人の美少女がいたが、傲慢な性格故に女生徒には激しく嫌われていた。ある日彼氏を取られたと泣く友人に、まことは美少女二人を引き離す作戦を提案する。圭子だけに優しくする女生徒たちの作戦は的中し、次第に圭子と順子の仲はギクシャクしてしまう。一人ぽっちになってしまった順子はまことを慕うようになるが、まことが生徒会長の江崎を好きなことに気付いた順子は「江崎に無理矢理キスをされた」とまことに告げる。冷たくしても慕ってくる順子のいじらしさにまことは心を動かされ彼女と時間を共有するようになるが、その想いが互いに強くならないうちに気持ちを断ち切ることを決意して、思い出の教会で順子と最後の時を過ごす・・・。

理代子先生得意の「男性との恋の前の、早すぎる春の恋」のお話です。要するに少女期のプラトニックな同性愛ですね。同じテーマを扱った作品の中でもその色が濃く出ている作品で、憧れを通り越して本当の恋愛に近くなっています。この作品の一番の魅力はやはりキャラクターですね。まことはオスカルに代表される「男装の麗人」キャラ。そして「早熟きんぎょ」とあだ名される順子は「咲き誇る洋蘭」とまことに言わしめ、その愛らしさ満開で慕って来る様は可愛すぎ。その二人の切ない想いが季節ごとに募っていき、別れの決意とともに口付けを交わすシーンでは女の子同士なのにごく自然に胸を締め付けられます。あと、江崎氏がカッコいいです(笑)『ベルばら』連載中で画力が急激に上がった頃の作品なので、キャラクターの美しさが半端じゃないですね。そしてこの作風は、『べるばら』終了後に連載される大傑作学園ストーリー『おにいさまへ・・・』へと繋がっていきます。正にファン必見の繊細で美しい短篇、超オススメです!



ゆれる早春

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池田理代子さんを読み倒す。(15)『白いエグモント』

2005-12-09 (Fri) 23:36[ 編集 ]
『ベルサイユのばら』の連載中に発表された52頁の短篇です。壮大な歴史物の合間に描かれた等身大のありふれた女の子の学園ラブストーリーは、全ての作風を一旦リセットして基本に返った作品に見えます。1973年(昭和48年)1月10日臨時増刊号に掲載されました。

**あらすじ**
みち子はドジでのろまな高校生。同じクラスの志村くんに憧れるが、クラス委員で美しい林田女史も彼のことが好き。人の足を引っ張るまいと努力しても失敗を繰り返して落ち込みっぱなしのみち子だが、そんなみち子を志村は秘かに心の支えにしていて・・・。

こう言っては何なのですが、良くも悪くもそつのない秀作といった雰囲気です。みち子のドジさ加減は楽しいのですが、『桜京』や『ベルサイユのばら』で圧倒的なキャラの魅力という理代子さんの持ち味をまざまざと見せ付けられているので、ちょっと『エグモント』の登場人物では物足りない気がしてしまいます。ストーリー的にも小さなエピソードを重ねながらみち子の想いが届くまでが描かれるのですが、優しい雰囲気以外に取り上げるべき要素も特になく・・・私が贅沢を言っているようにも思うのですが、次回作として描かれる短篇『ゆれる早春』では同じ学園ストーリーなのにキャラもエピソードも理代子先生の本領発揮と言った意欲作になっていて、それだけに『エグモント』に対してはなんだか惜しい気もしてしまうのです。ちなみに「エグモント」はベートーヴェンの『エグモント序曲』のことで、志村くんがその曲が好きと言う設定でした(^-^) 何かのインタビューで読んだ記憶があるのですが、理代子先生はベートーヴェンがお好きだそうです。

白いエグモント

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池田理代子さんを読み倒す。(14)『ベルサイユのばら』

2005-12-07 (Wed) 23:33[ 編集 ]
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理代子先生の大傑作であり少女漫画の金字塔に立つ『ベルサイユのばら』。経済的効果・文化的功労の面から見てもその影響力は絶大です。週刊マーガレットに1972年(昭和47年)21号~73年52号に連載されましたが、連載中に画力が急激に飛躍し、理代子先生の持つ華麗で迫力のあるスタイルが完成しました。男装の麗人オスカルと麗しいロココの女王マリー・アントワネットの魅力は、連載が終了して30年以上経てもなお世界中の読者を引き付けて止みません。まともに語ると本が書けるほど長くなってしまいますので(笑)、簡単にではありますが書いてみます(^-^)

**あらすじ**
18世紀末。絶対王制の専制政治が行われていたフランスに、フランス・オーストリア同盟の架け橋としてオーストリアの皇女マリー・アントワネットが未来のフランス国王ルイ16世の元に嫁ぐ。若くして王妃となったアントワネットは国民の貧困には目も向けずに贅沢に明け暮れ、スウェーデンの青年フェルゼンと恋に落ちる。一方、代々王家に仕えるジャルジェ将軍家で軍人として育てられた末娘のオスカルは近衛連隊長として王室を護っていたが、平民の娘ロザリーや新聞記者ベルナールと交流するうちに王室に不満を持つ国民の現実を知る。近衛連隊長の地位を自ら退きフランス衛兵隊隊長に就任したオスカルは、一人の国民として、そして幼馴染のアンドレとの恋で女として目覚めていき、貴族としての身分を捨てて衛兵を率いて「自由・平等・博愛」の思想の元に革命の火蓋を切る。国王一家は捕らえられて王制廃止を余儀なくされ、国王と王妃は断頭台で処刑される。

大雑把すぎです(^-^;) もちろんこのおおまかな流れの中に様々なエピソードが盛り込まれ、フランス革命を背景に運命に翻弄された女性・マリーアントワネットと運命を自分から選び取った女性・オスカル、そしてフェルゼンやアンドレと言った様々な立場の男性の生き様を描いて行きます。特に革命前夜の三部会招集辺りからアントワネット処刑までの緊張感の持続は、この作品が少女漫画の域を超えて劇画としての確固たる地位を築くには充分です。あらすじをもう少し分かりやすく箇条書きにしてみましょう。

1. マリー・アントワネット政略結婚:皇太子妃と国王の愛人デュ・バリー夫人の対決
2. 首飾り事件:王妃の散財と不倫の恋・政治に対する国民の不満
3. 黒い騎士事件:近衛連隊長オスカルの思想の変化
4. オスカルの思想と愛への目覚め:混乱する政治・革命勃発
5. 王妃処刑:王制廃止後の国王一家の末路

構成としては大体こんな感じですね。連載が少女向け雑誌とあって、歴史背景を分かりやすく描くことや魅力的な架空のキャラやエピソードを絡める事は難しかったと思われますし、史実通りに描けない部分もあったかと思われますが、漫画として実に完成度が高く面白い作品として仕上がっていることは驚嘆に値します。
そして何よりも読み手の心を引き付けて離さないのは、二大ヒロインのオスカルとマリー・アントワネットの描かれ方です。
まずはマリー・アントワネット。オーストリアの女帝マリア・テレジアの末娘として気高い気質に産まれますが、14歳でフランスに輿入れしてからは女性として満たされない寂しさから遊戯や賭博に日々を費やすようになり、国の財産を使い果たしてしまいます。そのつけを第三身分(農民や商工人などの平民)への増税に回した政策は国民感情を煽り、果ては王制廃止・国王夫妻処刑に至るわけですが、こう書くとアントワネットは「稀代の悪女」という事になりますよね。しかしこの作品ではアントワネットは悪女ではなく、時代に翻弄された悲劇の王妃として描かれています。退屈な日々に出会ったスウェーデンの貴公子フェルゼンとの恋は許されないものながら清らかで、フェルゼンの進言によりアントワネットは民の上に立つ王妃として少しずつ目覚めて生きます。しかし時は既に遅く、絶対君主制から共和制へと革命を進める上で象徴的な出来事として行われたのが「国王と王妃の処刑」。つまりスケープゴートとしてのマリー・アントワネット像を、華やかに美しく描ききったのが池田理代子さんという作家なのです。理代子さん特有の「人間性善説」に基づいた観点から描かれた登場人物の最たる部分かと思われます。アントワネットへの不満の火付けとなった歴史に名高い「首飾り事件」の犯人ジャンヌ・バロアでさえ、理代子さんに掛かったら悪女一辺倒ではなく時代が生み出した悲しい女性として生き生きと魅力的に描かれるのです。
そして架空の軍人オスカル。きっとこの名前を知らない日本人はいないだろうと思われるほどの、有名すぎる男装の麗人にしてスーパーヒロイン。こちらはマリー・アントワネットとは対照的に、身分や称号、家・財産など自分が持ちうる全てを捨て去り、思想のために運命を自ら選び取った強靭な女性像が描かれています。金髪を風になびかせ美しい肌を軍服に包んだ凛々しいその姿は、漫画の中でも外でも少女達に大人気。この漫画の成功はオスカルの魅力無くしてあり得ないだろうと思われます。オスカルは将軍家の跡継ぎとして男として育てられるのですが、女性としての人生を選ぶという選択肢には彼女にはなく、フェルゼンに恋をした時でさえ女としての幸せを否定して気持ちを封印しました。そのオスカルがアンドレへの愛に目覚め、女性としての感情に目覚めていくくだりは実に感動的で、強いだけでない女性的なオスカルの魅力を感じさせられます。
対照的な二人のヒロイン以外にも、魅力的な人物が沢山います。例えばロザリー。彼女は「春風のよう」だとオスカルに言わしめる可憐な少女です。貧困からパリの街でオスカルに「私を買ってください」と声をかけたことが出会いの始まり。オスカルへの献身的な愛は激しい激動の時代の中での安らぎであり、また読者のオスカルへの気持ちを代弁する愛らしいキャラクターです。
そしてオスカルと結ばれる幼馴染のアンドレ。光り輝くオスカルに幼少の頃から影のように寄り添う彼は、実に出会いから30年近くもその感情を胸に秘め、男性の持つ優しさや大きさを体現しています。女伯爵オスカルと平民アンドレの身分違いの恋も、革命を彩る重要なエピソードです。
とりあえずキャラクターの魅力と言う点に絞って書いてみましたが、この作品の魅力を知るには読むのが一番早いですね。さぁ、お読みになって下さい!



※関連作品
アニメ :1979年10月10日~1980年9月3日(全40回) 
映画  :1979年ジャック・ドゥミー監督、カトリオーナ・マッコール主演
宝塚歌劇:1974年初演、以降再演多数。現在も上演中。スケジュールはこちら

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池田理代子さんを読み倒す。(13)『章子のエチュード』

2005-12-03 (Sat) 00:00[ 編集 ]
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これも初期作品の傑作ですね。『桜京』が好きか『章子(しょうこ)のエチュード』が好きかは完全に個人の好みによるでしょう。私の場合はキャラの魅力で『桜京』に軍配をあげますが(^-^;) 『章子のエチュード』も前向きでひたむきな少女が苦難を乗り越えて幸せをつかむ成長物語です。学園物で、「不義の恋」「妾の子」「わがままなお嬢様」と理代子先生色満載。週刊マーガレット・1972年(昭和47年)1号~18号に連載されました。この作品の後に少女漫画の金字塔を誇る『ベルサイユのばら』の連載が始まります。

**あらすじ**
高校生の柚木章子は突然の事故で両親を亡くしてしまい、父親の知り合いの会社社長・桐島の家で女中として働きながら学校に通う。桐島の娘で章子より一つ年上の麻由子は自分の気分で章子を都合よく扱い、大学生の息子・薫はなぜか章子に厳しく接する。どんなに辛くても笑っていようと誓う章子は、優しくしてくれる薫の親友・小嶺に恋をするが、小嶺には婚約者がおり、しかも本当の恋人は婚約者の妹で章子の同級生の野瀬百合子だった。許されない恋に絶望した小嶺と百合子は二人で冬の山に入り心中をしてしまう。それぞれの友人を失う薫と章子。そして薫は辛い境遇でも乗り越えようとする健気な章子に徐々に魅かれて行き、結婚を申し込む。

この作品には外的要因により辛い境遇に置かれた4人の女性キャラが登場し、それぞれが違った道を歩みます。
まずは「柚木章子」。両親が事故で他界し、他人の家で女中として働きながら高校へ通う。
章子の級友「野瀬百合子」は妾の子。本家で女中として働いているが、姉の婚約者と心中してしまう。
薫の元恋人「渡冴子」。事故で事業家の父を亡くし、贅沢な暮らしを続けるために金持ちの男性の愛人になる。
章子の級友「小早川さん(下の名前でて来ず)」。事故で父親をなくし、ブランド品を買うためにヌードモデルをしたり美人喫茶で働いたりしている。
それぞれの少女達が自らに課された境遇にどのように立ち向かって行くかによって行く末が全然違ってしまいました。小さな体で健気に頑張った章子は、大きく成長し薫という素晴らしい伴侶を得ます。逆境でもそれを乗り越えようとする力が人を成長させ幸せに導くという前向きなお話ですね。一つ一つのエピソードがとても濃く、しっかりと描かれているので読み応えがあります。
思うのですが、このドロドロ具合は昼ドラの題材にぴったりではないかと。昼ドラで学園物は無理かも知れないけど、なんとか考えてみてください東海テレビさん(笑)



↓Web漫画で読めます(^-^)
章子のエチュード (1) 章子のエチュード (2)

章子のエチュード


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池田理代子さんを読み倒す。(12)『桜京』

2005-11-22 (Tue) 00:01[ 編集 ]
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理代子先生の初期中篇の傑作です!男の子のように快活でとっても魅力的な少女「桜京」が主人公の、大きな大きな愛の物語。理代子先生の作品を語る上で欠かせない「ボーイッシュな少女」「学園愛憎劇」「不義の子と親の苦悩」を実に見事なほどに絡め合い、「本当の愛とは何か」を個性豊かな登場人物たちと探り当てて行きます。週刊マーガレット・1971年(昭和46年)9月26日39号~49号に連載されました。

**あらすじ**
風早勝子は高校1年生。両親を相次いで亡くし、東京に住む母の姉の家に住む事になった。初めて会う叔母・夏子は銀座に店を持つ有名デザイナーで、夏子の娘で同い年のいとこ「桜京」は名前に似合わず男の子の様な服装をした元気な少女。まるで姉妹のように仲の良い親子は、実は苦悩を乗り越えて大きな絆で結ばれていた。父と母が夏子を裏切る形で結婚したことを知った勝子は、少しずつ夏子と京の育んできた愛を知る事になる。

キャラクターの魅力から語りましょう。なんといっても「桜京」。名前に似合わず乱暴で気が強く男勝りな少女。そして正義感が強く、どんな状況でも自分の意志を伝えることを臆さない。制服以外はスカートをはかないその凛々しい姿は「ベルサイユのばら」のオスカルを彷彿とさせます。彼女の数々の名言を紹介しますね。
・勝子が新しい学校に初めて行くとき「案内してほしけりゃちゃんと人より先に仕度して待ってるもんだ!」
・三つ編みおさげの髪型を笑われた勝子が、亡くなったお母さんが毎朝編んでくれた髪型だから泣きながら言うと「だったらどんな事を言われたって絶対泣くな!それがプライドってもんだ!」
・心無い中傷に泣く勝子に「頭をあげて胸をはれ!やましい事は何もないってことを見せてやろうじゃないか!」
他「てめえら顔で恋愛するのかよ?!じぶんの顔を鏡で見てみろってんだ!」などなど。こういう直情的で正義感の強いキャラが個人的に大好きなのですよ。歌の才能と美しさから嫉妬されていじめられる勝子も、京の言葉で救われ徐々に強くなっていきます。
そんな京と勝子の出生の秘密・・・実は京も勝子も、夏子を裏切った男性の子供。京は夫の不義の子で、夫が亡くなった後に一時的な情から小さい頃に夏子が引き取ったものの、憎さからついに京の首を絞めてしまいます。しかし京が息を吹き返したとき、夏子は「血を越え憎しみを越えたそんな愛もあるはずだ、自分が人を愛することによって愛を知ろう」と京を自分の子として育てることを決意します。そして夏子は、自分を裏切って自分の妹と結婚した元婚約者の子・勝子を引き取ることでもその大きな愛を示します。もちろんそれは並大抵のことではなく、そんな素晴らしい至上の愛を持って育ててくれた夏子を京は心から尊敬し、強く明るい少女に育ちました。産みの親に偶然会った京は勝子に言います。「産んだだけでは母親とは言えない」。そして、眼鏡をかけていることがコンプレックスの優等生・侑子には「若い女性はみんなそのままで美しい。そのあとこの美しさを本物にするかどうかは本人の内面次第ってわけさ」。物事の本質、そして心を美しく持つことの大切さ。京と夏子は勝子に、そして読者に身を持って教えてくれるのです。
人は自分でも気付かずに人を傷つけてしまうことがある事、どんな境遇でも乗り越える力を持つ事の素晴らしさ、人と人が交わす愛情の美しさ。そんな事を涙しながら読みとって欲しい、正に初期の傑作中篇です。この作品はWeb漫画で読めますので、興味を持った方は是非読んでみてください(^^)



↓Web漫画で読めます(^-^)
桜京 (1) 桜京 (2)

桜京


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池田理代子さんを読み倒す。(11)『ふたりぽっち』

2005-11-15 (Tue) 00:09[ 編集 ]
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いよいよ中篇に入ります。傑作が多いのでわくわくします(^-^) まずは『ふたりぽっち』。理代子先生の中篇連載の幕開けにふさわしい、彼女らしさたっぷりの学園物です。まずタイトルが良いですね。物語を端的に表していて美しい響き。後の作品に多く出てくる理代子先生独特のモチーフ「ボーイッシュな少女」「少女同士の擬似恋愛」が初めて登場し、キャラクター・ストーリー共に魅力的な作品になっています。1971年(昭和46年)週刊マーガレット23号~27号で発表されました。(ちなみにこの年、山岸涼子さんが「白い部屋のふたり」、萩尾望都さんが「11月のギムナジウム」を発表しています。才能有る少女漫画家たちが個性を発揮し始めた記念すべき年なのかも知れません。)

**あらすじ**
愛聖女学院に通うかおると令子は犬猿の仲。何かにつけ対立しいがみ合っていた二人だが、ほどなくしてかおるの母と令子の父が再婚し、二人は姉妹となってしまう。反発し傷つけ合いながらも次第に理解し合うようになり、特に令子は姉妹の域を超えてかおるを愛するようになる。しかしかおるには出生の秘密があり、深く苦しむようになる。令子も心臓の病により自分の死期が近づいていることを知り、ふたりぽっちで遠い街に旅に出る・・・。

この作品から登場し、後々沢山の作品・・・『ゆれる早春』『ベルサイユのばら』『おにいさまへ・・・』などで語られる少女同士の愛ですが、理代子先生は作品の中で「同性愛」という言葉を一切使用していません。(『ベルばら』の首飾り事件の裁判のシーンで犯人のジャンヌがマリー・アントワネットとの同性愛を告白しているのは虚偽証言です。短篇『クローディーヌ・・・!』の中では唯一肉体を伴っての同性愛表現がありますが、主人公の女性クローディーヌは性同一性障害、いわゆる「FtM」で理代子先生は「トランスセクシュアル」の言葉のみを用いています)理代子先生が描く少女同士の愛は、かおるのセリフにあるように「女の子はある時期に本当の恋の準備として同性に恋することがある」そんな愛です。私も女子高時代に経験があるのですが、多感な時期に周囲に男性がいないと自然にかっこいい先輩を好きになっちゃったりするのですよね(笑)でもそういうのは本当に一時期のもので、遠くから眺めてキャーキャー言っていただけで終わり、卒業したらちゃんと男性を好きになりました。そんな儚い、少女時代の揺れる心を描くことを理代子先生は大得意にしています。
かおると令子、この二人のキャラクターはこれからの理代子先生の作品に多く登場するタイプです。ボーイッシュで下級生に慕われる凛々しい女性、そしてわがままで美しく誇り高い巻き毛のお嬢様。対照的なタイプの二人が数々のエピソードで魅力的に語られ、読み手を引き付けて離しません。
そしてストーリー。これまた理代子さん十八番の「大人の身勝手に翻弄される子供の運命」。不倫の関係で生まれたことに苦しむかおる、愛の無い家庭で育って寂しい思いをしてきた令子。ただちょっとラストは納得がいきません(-_-;) と言うのも結局かおるの苦しみは癒されることなく、実は強盗殺人犯の子供だったことを知って絶望し、自分の命を忌まわしいと呪ったまま令子と共に自ら命を絶ってしまうのですね。私が思うに、親がどんな親であろうと産まれて来た命は尊いものであり、罪の子であるはずなんて絶対にない。そしてあの活発で聡明なかおるが自分の出生を全否定して自ら死に向かうなんて事が果たしてあるのだろうかと。最後のナレーション「ほんとうにそれだけしか道はなかっただろうか・・・?」の言葉に象徴されているように、未消化のまま終わってしまった感が否めません。理代子さんがもう少し後にこの作品を描いていたら、最後に死を選ぶとしてもその前に必ず生命の尊さを描いていたと思います。そう言った意味でこの作品は、強く引き付けられる魅力的な作品ではあるけれど同時に今ひとつ残念、そんな印象です。(ちなみに次作の「桜京」では同じテーマの路線を歩みつつ、前向きで素晴らしいストーリー展開が繰り広げられます)この作品は『池田理代子中篇集Ⅱ/章子のエチュード』に収録されています(^-^)



ふたりぽっち


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池田理代子さんを読み倒す。(10)初期の短篇4本

2005-11-12 (Sat) 00:46[ 編集 ]
1971~72年(昭和46~47年)頃の短篇をまとめて紹介します。次回からはいよいよ初期の中篇に入ります!

『あの人はいま・・・』
小学6年生の向井純子のクラスに美しい少女が転校してきた。不思議なほど瞳が大きいその三沢小滝という少女は、幼い妹が姉を慕うように純子に近づきたがる。小滝の美しさに嫉妬をする純子は、煩わしさから彼女を冷たく突き放してしまう。ある日クラス委員である純子は、集めたはずのクリスマスパーティーの会費がなくなっていることに気付き・・・。
精神薄弱の少女との短い交流を描いた物語。あの時もう少し彼女のことを理解しようと努めていれば、と純子は後に回想しますが、友達に対しての無理解な行動は誰にでも経験のあることですよね。なるべく後で後悔しないよう、その瞬間瞬間に努力しよう。そんな教訓が含まれています。

『上野駅4時50分』
雨の上野駅、一人の女性が見た様々な光景。迎えの来ない幼い兄妹、同じ境遇の駅員。駆け落ちの相手をじっと待つ人妻、詫びる夫・・・そして4時50分。彼女の待っていたひとは・・・。
25頁という短いストーリーの中でオムニバス的な人間模様が織り成されます。子供の頃読んだのですが、とても大人っぽい内容だなと思いました。昭和の雰囲気がとてよく出ています。

以上の2作品は「池田理代子全短篇Ⅰ/ウェディング・ドレス」で読めます。

『寒い春』週刊マーガレット・昭和47年4月5日臨時増刊号掲載
漫画家・結城万里子に一通のファンレターが届く。可愛らしい病床の少女の写真が同封されたその手紙には、もうすぐ自分が失明することの悲しみが綴られていた。万里子は失明が原因で自殺してしまった自分の妹を思い出し、病院に会いに行くが、写真の少女は元気そうに彼女の到着を喜んだ。その様子をドアの外で伺う小さな少女に万里子は気付き・・・。
「死んではいけない・・・それは罪。残された者への」。自殺した妹に思いを馳せるたび、万里子は自分の非力さに打ちのめされます。私も自殺で息子さんを失った人を知っていますが、家族の方たちの一生背負う気持ちを考えると自殺はこの上ない罪だと思わざるを得ません。悲しい物語です。

『フリージアの朝』
快活で愛らしい妹の由美子と違い、多美子は成績が良いだけが取り得の少女だったが、憧れの真芝先輩に思いを寄せることにより明るく美しい少女へと変わっていった。しかし思いを込めて書いた手紙が真芝の手に渡らず同じクラスの男子達の笑いの種にされたことを知り、多美子は傷ついてしまう。真芝が卒業する朝、彼の家に1輪のフリージアと共にささやかなメッセージを残し、多美子は初めての恋に終止符を打つ。しかし1年後、真芝が由美子に写真のモデルを申し込む・・・。
人を想う真剣で純粋な心を笑う事は決してあってはならないこと。この男子たち最低です(怒)少女の頃の微かな憧れと、ガラスの様に傷つきやすい青春時代を振り返る女性。ラストは爽やかな風を感じます。

以上の2作品は「池田理代子全短篇Ⅱ/白いエグモント」で。

短篇4本(ウェディングドレス・エグモント)


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収録本:ウェディング・ドレス 白いエグモント

池田理代子さんを読み倒す。(9)『沈丁花』

2005-11-11 (Fri) 21:19[ 編集 ]
初期の作品の中では珍しく、少し高い年齢層向けのテーマで描かれた35頁の短篇です。沈丁花のように香る純粋な少女の愛と、移り行く心の変化が綴られた青春の一ページ。昭和46年頃の作品と思われます。

**あらすじ**
第一志望の高校に合格した緋沙子に、家庭教師を務めていた堀が交際を申し込んだ。初めての恋に心を躍らせる緋沙子だが、年上で社会人である彼の過去の恋愛が気になっていた。ある日デート中に雨に降られ、堀の下宿にあがった緋沙子は堀に男女の関係を求められ怖さから拒否をしてしまう。強く緋沙子を愛していることを自覚した堀は、過去に別の女性と同棲していたことを打ち明けた。ショックで堀を拒絶する緋沙子だが、一年後、偶然堀が同棲をしていたというイラストレーター・中尾サチの作品を雑誌で見かけ、彼女に面会を申し込む。「彼が好きなら彼の現在を見てあげて」という中尾。緋沙子が堀の誠意と向かい合おうと決心したとき、彼と交際を始めた頃に咲いていた沈丁花の香りが再び緋沙子を包んで・・・。

清らかな初恋から大人の愛に変化を遂げる少女の心の変遷を描いたみずみずしい作品です。自分と同じように相手にも純潔を求める心、他の女性と愛し合って別れを経たことへの許せない気持ち。そんな幼い少女の恋愛感は美しいものではあるけれど、決して相手に強要できるものではありませんよね。相手の歩んできた歴史をすべて受け入れ、全てを理解し自然に愛する。そんな愛を知った少女は一年前より美しく成長し沈丁花のようにその芳しい香りを放つようになります。美しい物語ですが、個人的には「堀さん余計なこと言わなきゃいいのに」と思いますね(^-^;) 大人になりすぎてしまいました、はい。

沈丁花


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池田理代子さんを読み倒す。(8)『生きててよかった!』

2005-11-10 (Thu) 23:58[ 編集 ]
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理代子さんの作品には珍しく、男の子が主人公に設定されています。しかもとっても魅力的!でも内容は壮絶な人間物語です。理代子作品にこれからも多く取り上げられる「正妻と妾」「嫡出子と非出嫡子」を巡る愛憎劇がいよいよ魅力的な人物とストーリーを伴って描かれます。ファンの方々には人気がある作品なのではないでしょうか。週刊マーガレット・1971年(昭和46年)9月5日36号掲載、100頁の作品です。

**あらすじ**
小学6年生の高見泰樹は児童会長で人望が厚く、クラスの人気者。父は仕事で長い間不在だが、たまの帰宅を3人で過ごす短い時間を泰樹は美しい母と一緒に心待ちにしていた。しかしある日、母が事故で急逝してしまうが何故か父は葬式に来ない。住所を知らされて泰樹が出向いた場所は、東京にある父の「本家」だった。本妻に「妾の子」と罵られて虐待され、食事も満足に与えられない泰樹だが、転校先の学校での楽しい毎日と本当の事を知らされていない同い年の「本家の娘」陽子の明るさが辛い家での生活を忘れさせてくれた。が、ある夜ひどく折檻された泰樹は雨の降る道を彷徨い、気を失って倒れていた所を同じクラスの少女・川部圭子に助けられ、彼女の父の経営する病院に連れて行かれる。しかし圭子の父と正妻との電話のやり取りを聞いてしまった泰樹は生まれてきた事を呪い、病院の劇薬を飲んで自殺を図ってしまう。息を吹き返した泰樹が「死んだほうが楽だ」と叫んだとき、彼を打った圭子の父の手のひらに泰樹は長いこと忘れていた人の温かさと大きさを感じて・・・。

ベースは正妻による非嫡出子への虐待です。頭もよく明るい小学生の泰樹への執拗な虐待は実に凄惨で、正妻は着物を着た鬼のように読者の目には映るでしょう。しかし、12年以上も夫に裏切られ続けていたこと・・・愛人を作り子供まで産ませていたこと、その子供が突然家にやってきて一緒に暮らさなければならない苦しみは気が狂いそうなほどだったと思われます。正妻が鬼のような形相で泣きながら虐待したとき、頭の良い泰樹は彼女も苦しんでいることに気付いてしまい、周囲を傷つけている父親の身勝手さを知ります。そしてその父も自分をかばってくれない事を知った泰樹は絶望し、死へと心を向かわせていきます。泰樹が純粋な男の子だけに、読み手は涙を禁じえません。大人の身勝手さが罪の無い子供を苦しめること、生きることの大切さ・命の尊さが、とても魅力的なキャラクター達を通して描かれた初期短篇の傑作です。この作品は発売中の「池田理代子短篇集2」で読めますので是非読んでみて下さい(^-^)



生きててよかった


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池田理代子さんを読み倒す。(7)『ごめんなさい・・・』

2005-11-09 (Wed) 23:57[ 編集 ]
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この短篇は理代子先生ファンにとってはある意味伝説的なのではないでしょうか。主役や準主役は美男美女ばかりの理代子作品において、この作品の副主人公「山田やすえ」という少女は極めて異色の存在です。今の小中学生はどうか分からないけれど、昔の人は自分の小学生時代と照らし合わせてしまうのではないでしょうか。週刊マーガレット1971年(昭和46年)5月23日21号に掲載された60頁の秀作です。

**あらすじ**
小学校6年生の萩原涼子は優等生でクラスの人気者。一方、同じクラスの山田やすえは貧しい家で暮らす少女で、その不潔さや陰気さで皆に嫌われていた。一人ぽっちの彼女に涼子は優しく接するが、やすえはなかなか心を開かない。ある日、涼子が秘かに魅かれていた同じクラスの男子・松谷がやすえの家に行ったと知って涼子は嫉妬を覚える。そして校内の展覧会でやすえの絵が特選を取ったとき最初は祝福した涼子だったが、誰もいない放課後に咄嗟にやすえの絵を破ってしまう。自分の本心に気付く涼子だが、それでもやすえが心配で仕方ない。しかしほどなくして病弱なやすえの母が、子供を道連れに無理心中を図ってしまう・・・。

理代子さん得意の、社会問題を背景に少女が成長する物語です。やすえと涼子の違いは「貧富の差」。自分の生活が普通だと思って暮らす涼子は、やすえの生活を知ることによって貧富の差がある事を知ります。やすえに優しく接し、理解しようと努める涼子ですが、自分の行為は「優等生としての義務感」であり、松谷の言うように「ただの上すべりの同情」であることに彼女自身気付いてしまいます。「臭い」「汚い」そう言っていじめる子供達からやすえを守っていたはずなのに、ふとした瞬間に「あんな虫けらみたいな人」と叫んでやすえが心をこめて描いた絵を破り捨ててしまったとき、涼子は自分の心が他の子供達と何も変わらないことに気付くのです。
私にとっては個人的に身につまされる作品です。涼子と自分自身が重なってしまうのですよ。(ここから自分語りです、すみません。)私も中1のとき学級委員をしていたのですが、同じクラスに山田やすえのような子がいまして。彼女の場合は知恵遅れもあってクラスではかなり煙たがれる存在だったのですが、私も涼子と同じように「優等生の義務感」からどうしても見捨てられなくて、何かのときは私が一緒にいてあげたのですね。でも彼女は妄想もひどく、当時は私も子供でしたから妄想と気付かずに「嘘」だと思っていまして。だから、嘘は良くないと彼女を責めたことが何回かありました。彼女にとっては「妄想=真実」ですからとても辛かったと思います。大人になってからその事に気付いたとき、私がしていた事は他の同級生達がしていたいじめと何も変わらなかったのではないかと後悔しました。涼子もそうであったように、相手の立場に立って考えていたつもりが全く的違いだったことや、幼かった自分の非力さが今も悔やまれます。
どうかこの作品は涼子と同世代の子供たちに読んでもらって、本当に人を思いやるという事はどういう事か、また普通に暮らせることがいかに幸せかを知ってほしいです。今あるいじめ問題の根源は、恵まれた環境で育てられていることへの感謝の気持ちが欠如しているからではないかと思う今日この頃です。



ごめんなさい


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池田理代子さんを読み倒す。(6)『真理子』

2005-11-08 (Tue) 23:59[ 編集 ]
1971~72年(昭和46~47年)頃の理代子先生の作品に入ります。この頃から絵柄もストーリーも理代子先生の個性が強く出始めて、個々のキャラクターもとても魅力的な作品が多くなってきます。中篇も『ふたりぽっち』『桜京』『章子のエチュード』など力作揃いでレビュー書きにも力が入りそうです(^-^) 72年にはいよいよ大作『ベルサイユのばら』の連載が開始されるので、理代子先生の漫画家としての重要な節目になる時期と言えましょう。
まずは短篇から行きますね。今回取り上げる『真理子』は週刊マーガレット・1971年1月10・17日2・3号に掲載された58頁の読み切り。20数年経ってなお多くの人々に傷を残す戦争の爪あとを取り上げた秀作です。

**あらすじ**
真理子は生きる楽しさだけを知っていた普通の女子高生。彼女の家庭教師として雇われた大学生の大河は、なぜか学校の勉強より社会情勢や原爆のことを教えようとする。そんな大河に反発する真理子だったが、クラスメートの篠崎が原爆症でこの世を去ったことをきっかけに、戦争のもたらす悲劇・社会に生きる人間としての責任について考え始めた。そして大河と互いの恋心に気付いた矢先、彼は「出会わなければ良かった」との言葉を残して真理子の元から去ってしまう。そして冬が訪れた頃、大河からの手紙と共に真理子の元に悲しい知らせが届いた・・・。

短編ながら立派な反戦漫画であり、少女の成長物語でもあります。まだ高校生である真理子は「個」として生きているのが当然でしたが、突如原爆症に苦しむ人たちと関わり戦争がもたらす悲劇を知ります。そして少女の「公」としての意識が芽生え、自分は何をしたらいいか、「個」が「個」であるためにどう「公」と関わるかを考えることに目覚めます。理代子さんの作品には今後このように「公」の存在として強く歩んでいく女性が多く描かれていきますが、その女性たちの生き生きとした魅力が沢山の女性読者を引き付ける理由の一つでしょう。常々思うのは、理代子さんは「女性を描く天才」だという事。少女の揺れる心の動き、自立して大人になる過程などを実に繊細に丁寧に描いてゆきます。レディースコミック期(注:18禁ではなく、大人の女性向け漫画)ではさらに複雑に多様な女性の内面を鋭く描き出しますが、それは後でのお楽しみ。しばらくは少女たちの透明感溢れる成長物語のレビューが続きます(^-^)

参考(ウィキペディアより)
1945年(昭和20年)終戦
1967年(昭和43年)野坂昭如の小説「火垂るの墓」直木賞受賞
1968年(昭和44年)吉永小百合主演の映画「あゝひめゆりの塔」発表

○1971年(昭和46年)の出来事
沖縄返還協定の調印式
日清食品がカップヌードルを発売開始
特撮TV番組「仮面ライダー」第1作放映

真理子


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池田理代子さんを読み倒す。(5)初期の短篇4本

2005-11-02 (Wed) 23:59[ 編集 ]
前々回に続き、デビュー年の昭和43年から45年頃までの作品と思われるものを4本紹介します。

『愛のさざなみ』週刊マーガレット・昭和44年1月26日3号
ロザリィは家庭教師のジョージを好きだったが、カナダに帰ったジョージからは何の連絡もない。しかしそれは二人の仲を嫉妬したキャサリンの画策による誤解だった。再び出会う約束の期日を過ぎてからロザリィの元に戻ったジョージが見たものは・・・。
ロザリィを思うロバートとジョージ二人の男性の心の優しさが「人を思いやる心の大切さ」を教えてくれる良い作品です。が、モントリオールに降り立ったロザリィがジョージを偶然見つける辺りはちょっと強引な気がします(^^;)

『星くずの童話(メルヘン)』週刊マーガレット・昭和44年4月13日15号
リズの彼トニーはマリオネットサークルの一員。恵まれない施設の子供達への慰問活動に熱心なトニーをリズは誇りに思っていたが、ある日サークルに美しい女性がいるのを見て、サークルに熱心なのは彼女のせいだと誤解してしまう。傷心のリズは星空の下で不思議な少女に出会い・・・。
好きな人の趣味を理解することと我慢することは違いますよね。心から相手を理解することの大切さを教えてくれる好短篇です。

『オセロー』週刊マーガレット・昭和44年46号
ムーア人でありながらベニスで将軍の地位につくオセローは嫉妬した同僚のイアーゴーに陥れられ、最愛の妻デズデモーナを殺してしまう。シェイクスピアの戯曲の漫画化。
戯曲を読むのが苦手な私には非常に助かります(^^;)仕上げは3日間の完全徹夜だそうです@@

『友情のハーモニー』
大好きな沢田先生にフルートのピアノ伴奏を頼まれて有頂天のさち子だが、フルート奏者は沢田先生ではなく上級生の幸男だった。演奏を成功させようと努力する幸男より沢田先生の気持ちが気になるさち子は練習に身が入らず・・・。
音楽を奏でるのは音符ではなく人の心だというテーマが込められています。

以上の4作品は「池田理代子全短篇集Ⅰ愛蔵版/ウエディング・ドレス」でどうぞ(^-^)

短篇4本(ウェディングドレスより)


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池田理代子さんを読み倒す。(4)『祖国に愛を!』

2005-10-30 (Sun) 20:28[ 編集 ]
理代子先生ファン必見の作品を紹介します。「ベルサイユのばら」への布石となる重要な作品ですので是非読んでみてください(^^)週刊マーガレット・1969年(昭和44年)5月4日18号~6月15日24号に連載、85頁の作品です。

**あらすじ**
地方領主の息子ユリウスは森で美しい娘メルジーネに出会う。しかし彼女は都で謀反をおこしたブロイニング公の娘で、追っ手から逃れて森に潜んでいたのだった。メルジーネや圧政に苦しむ農民達から社会の在り方、人間として何をすべきかを教わったユリウスは父や兄と共に祖国を守るため、革命に命を捧げる。

「自由・平等・博愛」を掲げたフランス革命を描いた『ベルサイユのばら』をぐっと凝縮したエッセンスのような作品です。初期の理代子先生の得意分野である田園物語に歴史的テーマが加わって、美しくも力強く生き生きした作品となっています。農民の娘アンナが「ベルばら」のロザリーにそっくりなところも良いです(笑)

祖国に愛を


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池田理代子さんを読み倒す。(3)初期の短篇5本

2005-10-30 (Sun) 20:26[ 編集 ]
デビュー年の1968年(昭和43年)から1970年(昭和45年)頃までの作品を5本紹介します。この頃の作品で特徴的なのは、短いお話の中に一つのテーマが組み込まれていて読み手の少女に必ず一つのキラキラ光る星を手渡すような優しい作品であることです。絵柄も優しく、自分の子供にも読ませたいなと思える良い作品ばかりです(^^)

『ローラの初恋』
8歳のローラは偶然出会った青年ヘルマンに恋をします。恋を叶えるために魔法使いのおばあさんにお願いして3日間だけ16歳になれたローラ。しかしローラの姉リディアがヘルマンに恋をしていることを知り・・・。
おませなローラがとっても可愛いメルヘン作品。その元気な姿は、後に発表される「ベルサイユのばら外伝」の天才少女ル・ルーちゃんを彷彿とさせます。

『フランチェスカの肖像』週刊マーガレット・昭和44年2月16日6・7号~3月2日9号掲載
世間知らずな領主の娘フランチェスカは、恋人である使用人のレオを手助けするために母親の大事な宝石を盗んでしまう。しかし疑いをかけられたレオの祖父が領主に殺されてしまい、領主と宝石を盗んだ真犯人に復讐を誓ったレオは医者に姿を替えて10年後に再びフランチェスカの家を訪れる・・・。
田園物語という点では理代子先生の得意分野と言えますが、このお話を描くにはちょっとページ数不足の感があり。ラストのレオの苦悩、そしてフランチェスカへの愛への葛藤が描かれると良かったなと思います。

『初恋物語』週刊マーガレット・昭和44年7月20日29号掲載
小学6年生の須藤のクラスの担当は、大学を出たばかりの美人教師千早先生。千早先生のあたたかさに須藤は魅かれるが、先生には婚約者がいて・・・。
こちらは男の子&クラス全員が少し大人になる話。私も子供の頃にこれを読んで、須藤くんやクラスの女子達の気持ちと自分の気持ちが連動していたことを思い出しました。

『カンタベリーの夏』週刊マーガレット・昭和44年8月10日32号掲載
毎年カンタベリーのキャロル宅を訪れるサミエルとジョアンナ兄妹。キャロルは秘かにサミエルに想いを寄せるが、サミエルは森で不思議な美少女オリビアに魅入られてしまい・・・。
ミステリアスな夏の出来事を描いた短篇。こちらも田園物語です。

『朝は6時30分』週刊マーガレット・昭和45年8月16日33号掲載
中学3年生の奈々子は早朝マラソン中に大学4年生の真吾と出会う。兄を慕うように真吾を想う奈々子だが、偶然真吾に迫る女性の姿を見てしまい・・・。
大人の世界を初めて意識し、少女から大人へと成長する奈々子が生き生きと描かれています。

以上の5作品は「池田理代子全短篇集Ⅱ愛蔵版/白いエグモント」でどうぞ(^-^)

○1969年の出来事(ウィキペディアより)
NHK-FM本放送開始
アポロ11号、人類初の月面有人着陸成功
三島由紀夫「春の雪」発表
藤子不二雄「ドラえもん」連載開始
アニメ「ひみつのアッコちゃん」「タイガーマスク」「アタック№1」「サザエさん」放送開始

○1970年の出来事(ウィキペディアより)
日本万国博覧会(大阪万博)開催
よど号ハイジャック事件発生
三島由紀夫、市谷の自衛隊東部方面総監部にて割腹自殺

短篇5本(白いエグモントより)


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池田理代子さんを読み倒す。(2)『この空の下に』

2005-10-28 (Fri) 16:15[ 編集 ]
何かの本で読んだ記憶があるのですが、この作品は理代子先生がデビュー前に書いたもので、掲載したら「主人公が可哀相すぎる」との感想がやたら多かったとか。デビュー前という事は1967~8年(昭和42~3年)頃の作品でしょうか。43頁の短篇です。

**あらすじ**
お嬢様育ちの高校生・令子は恋人の達治と婚約し薔薇色の日々を送っていた。が、達治は事故で画家志望の亜紀子の目に怪我をさせてしまい、見舞いに行くうちに彼女の心の美しさに打たれてしまう。失明を宣告された亜紀子の面倒を一生みる為に令子との婚約を破棄して亜紀子と結婚をする決意をする達治。令子と達治は身を引き裂かれる思いで別々の道を歩むことを選ぶ。

これは切ないです。誰が悪いわけでもなく、ただただ運命の中で自らの取るべき道を模索する登場人物たち。理代子先生の作品の多くには「悪人」が存在しません。心が歪んでいる人も道を誤る人も、原因があり過程があり、必ず「本当はみんな良い人」という人間性善説に回帰しています。しかし、いかに良心だけで生きていても必ずしも思うような幸せをつかめるわけではない。そんな現実が描かれていて、「勧善懲悪」に慣れていた昭和時代の年少の読者はさぞや戸惑ったことと思います。
個人的に一つ気になるのは、今作品や「章子のエチュード」「おにいさまへ・・・」など理代子作品には高校生で婚約や結婚をする話が結構あるのですが、当時は高校生で結婚する率って今より高かったのでしょうか・・・当時の高校生の恋愛事情や結婚観など、機会があったら知りたいなと思います。

この空の下に

myスクラップより。今作品が収録されていた単行本です(画像左から2・3番目は絶版)
私が所有しているのは一番左の「池田理代子全短篇集Ⅰ愛蔵版/ウェディング・ドレス」。これも入手困難です。

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池田理代子さんを読み倒す。(1)『愛は永遠に』

2005-10-27 (Thu) 11:15[ 編集 ]
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まず初回は、現在一般的に読める最も古い理代子先生の作品『愛は永遠に』。1968年(昭和43年)発表、49頁。
(最初にお断りしておきますが、まだ私が生まれてない時期の作品なので時代の解釈に間違いがありましたらすみません^^;)昭和43年当時の漫画界は、男性作家では手塚治虫・女性作家では水野英子らが人気。「巨人の星」「アタック№1」に代表されるスポ根漫画や、華麗なドレスをまとい大きな瞳に星を湛えたお姫様が主人公の漫画が主流で、理代子先生の今作品も後者の流れを踏襲した王道の少女漫画と言えます。

あらすじです。18世紀頃のオーストリアが舞台でしょうか(服装の雰囲気で判断しました)。
貴族の息子アルフレッドと下働きの娘エリナは秘かに愛し合う恋人同士。父親に反対された二人は駆け落ちの約束をしますが、行き違いからアルフレッドに裏切られたと思い込んだエリナは冷たい河に身を投じてしまいます。傷心のアルフレッドは旅先のチロルでエリナに似た少女クリスチーネに出会って真実を知り、深い雪の中で永遠の愛を誓うのでした。

ストーリー展開の速さや唐突さは、当時のスタイル・・・と言うよりは、当時の漫画が一つの文化としての地位を確立していない事による、漫画界全体のクォリティの甘さによる部分が大きいかと思います。娯楽が今より少なかった昭和の時代、幼い少女でも気軽に読める漫画雑誌に載せるとなると、自然と物語はこういったエピソードを追う形になってしまうのかなと。しかしここにはちゃんと池田作品の原点が確認できます。
ポイントはアルフレッドを取り巻く3人の少女、エリナ・クリスチーネ・そして貴族の娘テレーゼ。この3人は実は異母姉妹で、テレーゼは正妻の子、エリナとクリスチーネは父親が貴族の女性と結婚する際に身ごもったまま捨てられた元恋人の貧しい女性の娘です。以降、理代子さんの作品に多く登場するのが「正妻の子」と「妾の子」、そして「身分違いの恋」。社会や大人のエゴイズムに翻弄される人間達が運命と戦う姿を、理代子作品の読者は様々な場面で目にすることになります。そして「運命を乗り越える」ことや、フェミニズムにも通じる「女性の自立」は、この先30年以上に渡る池田作品の中枢になるテーマとなっていきます
絵柄は王道のお姫様系ですが、安定したデッサン力と線の美しさは当時の漫画家としては卓越しており、後々華麗なるロココの女王マリー・アントワネットを描くことになる漫画家としての技量も伺われます。絵的にも思想的にも理代子さんの漫画家としての基点となる重要な作品ですので、ファン必見の一作と言えるでしょう。

参考:1968年の出来事(ウィキペディアより)
第二次佐藤栄作内閣発足
三億円事件
川端康成ノーベル文学賞受賞
週刊少年ジャンプ創刊
映画「猿の惑星」公開



愛は永遠に

画像左から2・3番目は今作品の収録単行本で共に絶版。表紙だけスクラップ保存してます。
私が今持っているのは一番左の画像の「池田理代子全短篇集Ⅱ愛蔵版/白いエグモント」。現在入手困難です。

※こちらの収録本は現在入手困難ですが、
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池田理代子さんを読み倒す。

2005-10-26 (Wed) 23:40[ 編集 ]
最近ブログの内容が異様にのほほんしすぎなので、一つテーマを持って更新してみようかなと思いました。思いついたのは、「池田理代子の漫画を読み倒す」。『ベルサイユのばら』で有名な理代子さんの漫画が大好きでして、殆どの作品を数え切れないほど繰り返し読んでいるのでこのテーマだったら少しずつでも更新できるかなと。他にも「三島由紀夫」を読み倒すとか考えたのですけどね。読むのは好きだけど語る自信はありません(笑)んで石垣佑磨の筋肉を語るとか成宮寛貴のエロスを語るとかでも良かったのですけど一回で終わりそうなので(笑)
ということで、池田理代子さんの漫画の感想を少しずつアップしようと思っています。まずは楽な短編から。長編まで行き着くのかどうかは不明ですが(^^:)

池田理代子先生:1967年に「バラ屋敷の少女」でデビュー・・・が、この作品見つかりません_| ̄|○ 翌年の「愛は永遠に」が現在発売されている最も古い作品です。私が理代子さんの作品を読み始めたのは実に25年も前になりますが、ずっと読んできて思うのは、理代子作品の特徴は「人間性善説」に基づいているという事。人間は本来皆善い人で、努力すれば心は通うし世界も平和になる。そういう理想を基盤として、少女達が憧れとする夢の世界を描いた「オルフェウスの窓」までの少女コミック期と、理想と現実に真っ向から立ち向かい問題提起や人物描写に果敢に挑んだレディースコミック期。理代子先生ほど前期と後期で変遷を遂げた作家も珍しいでしょう。そこに作業としての職業漫画家とは違い、漫画そのものに命を注ぎ込んだ芸術家としての理代子先生の生き様が現れています。今現在は声楽家としての活躍の方が目立つ理代子先生ですが、1972~73年に連載された『ベルサイユのばら』を筆頭とする彼女の作品はいまだ世界中の人々に愛され、人気の衰えることを知りません。人間の歴史が地球と共に終わりを告げるまで、理代子先生の作品はずっとずっと綺羅星のごとく輝き続けることと思います。

では、後日更新開始いたします(^^)

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